今月開かれた審査員研修会2015のまとめが終わっていなかったので
少しずつ書き溜めていたものをアップします。
今日は、昇段審査の基準について
(今日も少し長いよ・・)
全日本剣道連盟は、剣道の理念を
「剣の理法の修練による人間形成の道」とし、
その「剣の理法」の修練の成果を明確にする手段として「試合」があり、
そのような修練の奨励や向上に資する目的として「段位制度」を置いています。
まず、試合の話です。
剣道の試合にはルールが定められていますので
剣道も現代のスポーツ競技のひとつに分類されます。
(「武道!」という議論は、横に置いといてください。)
そして
世界中のスポーツの試合は
記録、採点、判定といった方法のどれかによって
競技の決着がつけられています。
その中で、剣道の試合は、
「芸道文化としての継承性の面からみて、
完全な競技化はできないことを前提として競技化している判定競技である。」(by 作道)
とされています。
では、
その試合では何を判定しているか
「有効打突」の有無です。
有功打突(剣道試合・審判規則第12条)の条件は
皆さんがご存知の
「充実した気勢、適正な姿勢をもって、
竹刀の打突部で打突部位を刃筋正しく打突し、
残心あるもの」
という条件であって
有効打突の条件は「理合」の部分と「残心」の部分で成り立っています。
この「理合」の内容は
「要素」と「要件」から整理されていて
要素には、
間合・機会・体さばき・手のうちの作用・強さと冴えがあります。
要件には、
姿勢・気勢(発声)・打突部位・竹刀の打突部・刃筋があります。
「残心」は、
打突後の「身構え」と「気構え」の二面があるとされています。
一方、
(次、審査の話です)
昇段審査の場合は、何を判定しているか・・
「合否」です。
「合否」が判定されます。
合格かどうかを審査員は評価して判定しなければなりませんから
合格と不合格の境界を見積もるための「ものさし」が必要です。
この「ものさし」の目盛に相当するのが
段位審査の「付与基準」です。
審査は、
称号段位審査規則及び細則に基づいて行われていますので
その第14条に「付与基準」が示されています。
(この基準のなんとわかりにくいこと)
例えば、初段は
「剣道の基本を修習し、技倆(ぎりょう)良なるもの」
という「ものさしの目盛」があって
この目盛はこれだけでは読めないので
目盛の読み方を教えてもらう必要があります。
教えてくれている部分が審査上の「着眼点」です。
「段位審査実施要領」の中の「段位審査の方法」に
この着眼点の項目が示されています。
この着眼点が「ものさし」の「目盛」の読み方になります。

初段ないし三段は
@正しい着装と礼法
A適正な姿勢
B基本に則した打突
C充実した気勢
で読み取ります。
4段および5段では、上記に加えて
D応用技の熟練度
E鍛錬度
F勝負の歩合
も読み取らなければなりません。
さらに、6段以上では
G理合
H風格・品位
も読み取られます。
番号順に
重視されているのもが挙げられていると考えてよいと思います。
すると
誤解を恐れずに大まかに表現すると
初段から三段は
「見栄え」
4段と5段は
見栄えに加えて
業が実用的なレベルで用いることができるか
6段以上は
使いこなしたいぶし銀のような年期による
業の合理性(理合)
立ち振る舞いの風格や品位
が求められているということができます。
そして
短い審査時間を通して
技を起こすまでの運動経過の「質」と年期が問われているので
「質」が良ければ
極端な場合は
有効打突がなくても合格することもあるということです。
また
@正しい着装と礼法
ができていなければ
どれほど強くたって
いっぱつで不合格にして構わないということになります。
以上のように整理してみると
剣道昇段審査の審査員には
「審美眼」
が必要といえるでしょう。
ちなみに
日本の教育評価専門研究者の間では、
「きじゅん」は、
英語としては‘criterion’に「規準」を、
‘standard’に「基準」を充て、
教育界では
「のりじゅん」「もとじゅん」と読んで区別しています。
「広辞苑」では(「広辞苑第六版」2008年1月、岩波書店)。
「基準」:ものごとの基礎となる標準。比較して考えるためのよりどころ。
「―を設ける」「―を上まわる出来」「建築―」。
「規準」:「規」はコンパス、「準」は水準器の意) @規範・標準とするもの。
A [哲] (criterion)信仰・思惟・評価・行為などの則るべき手本・規則。規範。
であり
「評価規準と評価基準」(『教育評価事典』図書文化社、2006年6月、80頁)によると
「普通、評価を行うためには、
テスト得点や作品を比較したり、
照合したりするための何らかの枠組(判断のよりどころ) が必要である。
「評価規準」とか「評価基準」というのは
この照合の枠組(frame of reference) のことである。
評価の照合の枠組には
「何を評価するのか」という質的な判断の根拠と、
「どの程度であるか」という量的な判断の根拠の2つが必要である。
前者の質的な照合の枠組としては、
教育目標を評価目的の文脈に従って具体化した目標や行動を用いるが、
これを「評価規準(criterion)」という。
それに対して、
後者の量的・尺度的な判定解釈の根拠を「評価基準(standard)」という。
[中略]
語義としては、評価の枠組として、
質的な「評価規準」と量的な「評価基準」の2つを区別しておく必要があるが、
実際の評価は両者が一体的になされるので、
両者を含む概念として評価規準が用いられることもある。」
とされています。
剣道の審査の「きじゅん」では「もとじゅん」が使われています。
長い割には
まとまりのない終わり方になってしまいました。
審査員研修会2015の備忘ということでお許しください。