先日の審査委員研修会では
剣道試合の審判に際しての反則事項の見極めについて
色々と共通理解がはかられました。
小学生、中学生、高校生の学校種によっては
それぞれに申し合わせ事項やグランドルールが適用されていますが
大学剣道における審判会議での了解事項は以下のようになっています。
少し長いよ。
1 礼法
選手が開始の立礼から終了の立礼までの正しい礼法を行わない場合には指導する。
2 名札
(1)大学名及び個人名を記入した正規の名札を着用しない選手は出場できない。
(2)同一大学からの出場選手に同姓者がいる場合は、
苗字の右下に名前の一字を入れ、区別できなければ出場できない。
尚、上記に該当する選手が発覚した場合は、
不正用具使用者として扱い、負けとし、相手に2本を与え、
既得本数および既得権を認めない。
3 有効打突
打突後の残心(身構え、気構え)もしっかりと確認した上で有効打突を判定する。
打突後不適切な行為があった場合は合議の上、有効打突を取消す。
4 反則
正当か不当か、行為の原因と結果を正しく見極め、
「公明正大」の観点で厳格に判断する。
(1)鍔競り合い
@「正しい鍔競りをしようとしているか、技を出そうとしているか、分かれようとしているか」
の3点をよく見極める。
不当な鍔競り合い(時間の空費・専守防衛的行為等)には、
合議の上で反則を適用し、再発を防止する。
A鍔競合いの解消は、
原則、剣先が離れたところまでとするが、両者が五分の状態で分かれ次の展開に進んだ場合これに該当しない。 B分かれ際の胸突きにより相手を引かせる行為は、至る原因も見極めた上で反則とする。
C安易に「分かれ」をかけない。
適正なつば競り合いで膠着した状態にあるかを見極めた上で「分かれ」をかける。
(2)時間の空費
1本取得後に、時間空費を目的としてつば競り合いに入っていく行為
(左拳を上げた中段変形した構えなど)を見逃さない。
(3)場外
身体接触後の場外は出た方を反則にするケースが多く見られるが、
不当な押出し、突き出しによる場外であるかどうかをよく見極める。
(原則として1打突1押し)
(4)不当な中止要請
中止要請については必ずその理由を問う。
正当性が疑わしい場合には合議の上、「公明正大」の観点で厳しく判断する。
(5)竹刀落としを目的とした行為
竹刀落としを目的に
強く叩く、鍔競り合いから竹刀をはねあげるなどの見苦しい行為に対しては、
第一条に照らし、行為を行った側を反則とする。
(6)その他不当な行為
@手で打突部位を隠す行為
A打突意志のない防御一辺倒の行為
B中段の三所隠しと同じく、上段においても見苦しい行為
5 合議
(1)「止め」で双方の選手が開始線に戻ったところで、「合議」を宣告する。
(2)主審は双方の選手を境界線の内側で正座または蹲踞をさせた上で、
その後に試合場中央に進み合議に入る。副審が先に動いてはいけない。
(3)反則内容によっては主審の判断により選手に伝える。
(4)合議の後、主審のみが表示をし、宣告する。副審は表示をしない。
6 旗の表示
審判員の有効打突の表示に対して、他の審判員も必ず表示を行う。
二人もしくは一人の審判員の表示がない場合は、
試合を中止し合議にて相互の表示を確認する。
主審が見逃している場合には審判主任が直ちに試合を止めて三人の表示の確認を求める。7 位置取り
(1)主審を頂点にして、試合者双方の手元の位置を通して二等辺三角形を保持する。
上段の試合者に対する位置取りに注意する。
(2)試合者と他の審判員の動き、流れを先取りして無駄のない動きをする。
(3)主審が素早く動き、常に試合者の中心を維持することにより副審も動きやすくなる。
副審も最短距離で移動する。
8 その他
審判内容の検討
各組が最初の審判を終えたごとに、審判主任を交え内容の検討を図る。
そして、
「鍔競り合い」に関する審判の留意事項は
1. 鳄競り合いが頻発する、あるいは長びく原因について
審判員は不適正性の
僅かな差を厳しく見極めて、
合議の後反則の宣告は必ず片方の選手に与える。
2、以下の諸点に特に留意する。(審判員は僅差であっても見逃さない)
(1)鳄競り合いの第一の要件は“鍔と鍔とが接する”ことであり、
その為には竹刀は 右傾前方に傾けられていなければならない。
直立していたり、剣先が自分のほうに傾むいていれば反則の対象となる。
(2)右手•右足を前にする剣道の対人的対応では、
裏鎬の側で交叉する(逆交叉)のは 適正、妥当な様相ではない。
瞬間的に逆交叉になることはあり得るものの、
直後には正当な表鎬側での交叉に直さなければならない。
故意に逆交叉した者、あるいは
右こぶしを体の中心より左側において鍔競り合いをする者は反則の対象となる。
(3)妥当な鳄競り合いは、相互に鍔元で相当の圧力をかけ合って競り合っていなければならない。
相手の力を故意に吸収して体を密着させる行為は反則の対象となる。3、
最も接近した間合い(鍔競り合い)からの引き技は、
相手の態勢を崩す
瞬時に間合いが切れるまでとびさがる技術
が伴っていなければならない。
中途半端な見せかけの引き技を発して、打突の意志ありと表現するのみでは、
鍔競り状態が長引くことになる。
審判員は両者の行動を見極めて、片方の反則を判断する。4、鳄競り合い状態を解消するためには、
1)相手の態勢を崩すと同時に、
2)自らも潔く瞬時にとびさがって遠間をとる技術
が発揮されなければならない。
相手にも退くよう促して徐々に間を切ろうとする行為や、
中間から再び接近する行為は、鳄競り合いを長びかせる原因となる。
瞬時に分かれようとしない者は反則の対象となる。
審判員は両者の行動を見極めて、片方の反則を判断する。
となっています。
最後に
「不当な鍔競り合い」という表現を「試合・審判規則」では使っているのですが
「不当」と「不正」と「不法」と「違法」の違いは
「不当」は、必ずしも法(:試合・審判規則)に違反することではないが、妥当性を欠いていること。
「不正」は、正しくないこと。法(:試合・審判規則)の違反に限らず、義務違反等の場合にも使われる。 (「不正『竹刀』」、「規格外『竹刀』」)
「不法」は、実質的に法(:試合・審判規則)に反していること。
「違法」とは、言葉のとおり、法(:試合・審判規則)に違反すること。
となります。